2025/11/10

最先端のAIおよびロボティクス機器がUCLAに導入され、
バイオメディカル研究者に新たな機会を創出

主なポイント

  • UCLAは、西海岸の公的研究機関として初めてCellXpress.ai自動細胞培養システムを導入いたしました。この装置は、細胞および組織の培養工程を自動化する研究用プラットフォームです。
  • 本装置を用いて幹細胞からオルガノイドを作製することで、創薬研究および基礎生命科学の双方において、従来の動物モデルよりもヒト生物学に近い細胞システムを用いた実験が可能になります。
  • この装置は、スピード、柔軟性、効率性、再現性の向上をもたらすとともに、煩雑な手作業を大幅に削減し、UCLAの研究を加速させるだけでなく、他の学術機関や産業界の共同研究にも大きく貢献いたします。

創薬研究や生命科学分野の探索研究には、一般にあまり認識されていない事実があります。それは、膨大な労力を必要とするということです。研究に適した細胞や組織を培養するという基本的な作業でさえ、数か月にわたる反復的で緻密な作業を要することがあります。

しかし、この状況は変わりつつあります ― 少なくともUCLAおよびその周辺の研究者にとっては。細胞や組織の培養および実験を完全自動化するロボットシステムが、Robert Damoiseaux氏が率いるMolecular Screening Shared Resource(MSSR)で稼働を開始いたしました。MSSRは、UCLAのカリフォルニア・ナノシステム研究所(CNSI)内に設置された技術センターです。モレキュラーデバイス社が開発した新しいCellXpress.aiシステムは、液体ハンドリング、細胞のインキュベーション、画像取得、データ解析といった一連の工程をすべて自動で実行いたします。ロボットコンポーネントは精密かつ自律的に動作し、人工知能が各ステップの管理、培養の監視、画像解析、データ処理を担います。

このCellXpress.aiシステムは、アメリカ国立衛生研究所による190万ドルのHigh Impact 設備助成金によって導入されたもので、西海岸の公的研究機関としてはUCLAが唯一の設置先となっております。本装置は、学内の共同研究だけでなく、他大学や産業界との共同研究にも利用可能です。

NIH助成金の主任研究者であり、UCLAの分子医学薬理学および生物工学の教授でもあるDamoiseaux氏は次のように述べています。「この新しい装置の導入は、科学をよりアクセスしやすく、信頼性が高く、スケール可能で、再現性の高いものにするという大きな文脈の中に位置づけられます。これらは、貴重な税金を含む資源を賢明に活用するために必要な要素です。」

CellXpress.aiシステムは、特に幹細胞からオルガノイドを作製する用途に適しています。オルガノイドはヒトの臓器を模倣する細胞システムであり、ヒト細胞由来であるため、動物実験よりもヒト生物学をより正確に反映したモデルとなり得ます。

CellXpress.aiシステムが研究者にもたらす活用方法

例えば創薬研究では、腎臓や肝臓のオルガノイドを用いて候補化合物の毒性評価を行うことができます。また、オルガノイドは、脳や免疫系の発生、脳内回路の形成、さらにはがん、肺疾患、認知症、神経精神疾患といった健康問題の理解を深める上でも不可欠です。

しかし、オルガノイドの培養には数か月を要し、日々の労働集約的な作業が伴います。

Damoiseaux氏は次のように述べています。「動物モデルを使わずに予測的な知見を得られるシステムは、以前から私たちの関心の中心にありました。幸いにも科学は常に進歩しており、幹細胞培養の高度な手法によってオルガノイドを作製できる段階に来ています。そして今、手作業とそのばらつきを取り除くことが可能になりました。」

CellXpress.aiシステムは、生命科学研究者に新たな柔軟性を提供いたします。21メガピクセルカメラを備えた顕微鏡が、脳の働きを模したタイプのAIに画像を入力し、染色や蛍光トレーサーを用いることなく細胞の状態を評価します。この自動化されたイメージングは進行中の実験をガイドし、豊富なデータを生成します。また、解析結果に基づく調整を実験途中で行うことも可能です。

Damoiseaux氏は次のように説明します。「細胞培養の経験を持つ優れた実験者であれば、細胞を観察してその状態を把握し、培地やその他の実験条件にどのような変更を加えるべきか判断できます。このシステムはそれを実現します。現在、私たちの分野ではdesign-test-analyzeというサイクルが語られますが、これは時間がかかります。新しいシステムでは『設計・試験・解析を同時に行い、その場で修正する』という段階に移行しつつあります。」

高度な技術知識は不要

MSSRのチームは、装置の開発企業との長年の協力関係も背景に、最も複雑な実験ワークフローを実現するための専門知識を提供いたします。

Damoiseaux氏は次のように述べています。「必要に応じて、実験を複雑にも単純にもできます。また、エンドユーザーは数学者でなくてもAIの力を活用できます。システムを自身の仕様に合わせてトレーニングできるため、研究者固有の技術が損なわれることはありません。さらに、私のような専門家が実験デザインやワークフローの検討をサポートいたします。」

ロボットによる作業で研究を進めることは、科学にも研究者にも利益をもたらします。作業はより効率的に、毎回同じ条件で実施され、結果の信頼性が高まります。

Damoiseaux氏は次のように述べています。「人がシステムの前に立つと、どうしてもわずかな違いが生じます。人それぞれに微妙に異なる手技があるからです。私たちは、こうした変動要因をすべて取り除き、最終的な成果物を均一にしようとしているのです。」

単調で煩雑な作業をシステムに任せることで、研究者は機械にはできない高次のタスクに時間と労力を振り向けることができます。Damoiseaux氏は、科学を支える人材を「置き換える」のではなく、「再優先化する」ことが重要だと強調しています。

「AIが仕事を奪うのではないかと心配する人もいますが、実際にはそうではありません」と彼は述べています。「AIが担うのは反復的な作業、つまり本当はやりたくない仕事だけです。その代わりに、研究者は新しいアイデアを構想したり、データ解析に集中したりできます。

結局のところ、システムがあなたの思考を代わりに行うことはできません。AIは良い問いを立てることができませんし、創造性も高くありません。」

MSSRのCellXpress.aiシステムが稼働を開始したのはごく最近であり、UCLAのバイオ研究における自律的実験の時代はまだ始まったばかりです。この装置は、CNSI、デイヴィッド・ゲフィン医科大学院UCLAカレッジのphysical and life sciences部門、UCLAサミュエリ工学部など、学際的な研究者に前例のない機会を提供します。Damoiseaux氏は、自動化が今後も研究の進め方を大きく変革していくと見ています。

「この装置によって、ソリューションを生み出すコストは大幅に下がるでしょう」と彼は述べています。「これまでスケール化が難しかった高度な細胞モデルやオルガノイドモデルの構築が可能になります。

同時に、これはより自律的なラボへの第一歩にすぎません。研究データがラボで生成され、研究者は自宅で解析する ― そうしたリモート実験の方向へ進んでいます。現時点では、非常に良いスタート地点に立っていると言えるでしょう。」

この記事はUCLA Newsroomに掲載されたものを許可を得て転載したものです。

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