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ELISA からHTRF を用いた エピジェネティクスへ

目次

  • はじめに
  • なぜHTRF?
  • HTRF アッセイ技術
  • cAMPアッセイ、Gαs 共役型受容体
  • cAMPアッセイ、Gαi/o 共役型受容体
  • IP-Oneアッセイ、Gαq/11 共役型受容体
  • サイトカインアッセイ
  • キナーゼ & エピジェネティックアッセイ
  • 最適化済みHTRF設定
  • 簡便なHTRF解析

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SpectraMax iD3/iD5マルチモードマイクロプレートリーダーについて問い合わせる


はじめに

HTRF®は、Cisbioが開発した、生体分子相互作用を検出するための多用途TR-FRET技術です。
Gタンパク質共役型受容体(GPCR)、キナーゼと細胞シグナル伝達、エピジェネティクス、そしてバイオマーカーについてアッセイが行えます。

HTRF検出は、アッセイ要件と検出限界を満たすために機器の設定を最適化する必要があるため、困難な場合があります。HTRFアッセイには、HTRFに適合することをCisbioが認定した、時間分解蛍光(TRF)検出モードを備えたマイクロプレートリーダーが必要です。

当社のSpectraMax®マイクロプレートリーダーは、良好な感度でHTRFを検出できる専用のバリデート済みモジュールを用いて、簡単にHTRF用に設定できます。また、SoftMax® ProソフトウェアのHTRF専用プロトコルには、1クリックでHTRFの性能規格を達成できる、最適化済みの設定と計算法が組み込まれています。

なぜHTRF?

ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)は、50年以上にわたり、医学や薬学研究などのさまざまな分野で、科学者による発見に貢献してきました。ELISAは低コストでセットアップしやすいため、現在でも広く使用されています。しかし、ELISA は、複数の洗浄ステップと時間のかかるインキュベーションが必要な多段階アッセイです。活性は吸光度(OD)として検出されますが、バックグラウンドが高く、ダイナミックレンジが限定されている場合があります。

この標準的なELISAの欠点に対処するため、過去15年余りの間に、時間分解蛍光(TRF)および時間分解蛍光共鳴エネルギー転移(TR-FRET)などの蛍光を利用したアッセイを含む新しいアッセイが開発されました。使いやすく、ダイナミックレンジが改善されていることから、これらの新しいアッセイが利用されることが増えてきています。

特に、Cisbioが開発したHTRFアッセイには、従来のELISA検出を凌ぐ多くの利点があります。HTRFは、二量体化タンパク質、2つのDNA鎖、抗原と抗体、リガンドとその受容体など、さまざまな生物学的パートナーの相互作用を検出します。1ステッププロトコルの、低容量、ホモジニアス、洗浄不要アッセイで、高レベルの感度が得られます。

ELISAの代わりとして有効に利用できるアッセイに加え、タンパク質間相互作用、核受容体アッセイ、受容体二量体化、リガンド結合、受容体内在化、酵素アッセイなどに対応するためのさまざまなHTRFツールボックス試薬とキットが利用できます。

HTRFアッセイ技術

HTRFでは、ドナーとアクセプターとなる2 種類のフルオロフォアを使用して、タンパク質やその他の対象となる生体分子を標識します。生体分子が相互作用すると、これらの分子が近接することにより、ドナーからアクセプターへの蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)が起こります。長寿命蛍光のランタニドクリプテートをドナーとして使用すると、HTRFアッセイの時間分解検出が可能になり、化合物やその他の物質からの短寿命のバックグラウンド蛍光を最低限に抑えることができます。
マイクロプレートリーダーを用いて時間分解FRET(TR-FRET)を検出することで、生体分子の結合が測定できます。

励起源(フラッシュランプ、レーザー)からのエネルギーパルスの直後に時間遅延を導入し、干渉する短寿命の蛍光を減衰させます。次に「カウンティングウィンドウ」の間にシグナルを捉えます。

cAMPアッセイ、Gαs 共役型受容体

Cyclic AMP(cAMP、環状アデノシン一リン酸)はGPCRシグナル伝達における重要なセカンドメッセンジャーです。cAMPの産生は、最もよく研究されているシグナル伝達経路であり、感覚入力、ホルモン、神経伝達などへの応答に関与しています。GPCRにリガンドが結合すると、構造変化に伴って受容体が活性化されることで、Gタンパク質が活性化されます。以後のシグナル伝達は、活性化されたGタンパク質のタイプによって異なりますが、Gαsが活性化されると、アデニル酸シクラーゼによってcAMPがアップレギュレートされます。

Gαs に関する当社のリソースをご覧ください。


アデニル酸シクラーゼのアップレギュレーションにより細胞cAMP濃度が増加します。細胞cAMPが増加するとFRETシグナルが減少します。

cAMPアッセイ、Gαi/o 共役型受容体

Cyclic AMP(cAMP、環状アデノシン一リン酸)はGPCR シグナル伝達における重要なセカンドメッセンジャーです。cAMP の産生は、最もよく研究されているシグナル伝達経路であり、感覚入力、ホルモン、神経伝達などへの応答に関与しています。GPCR にリガンドが結合すると、構造変化に伴って受容体が活性化されることで、G タンパク質が活性化されます。Gαi/o 共役型受容体の活性化はアデニル酸シクラーゼによるcAMP の産生を阻害します。

Gαi/oに関する当社のリソースをご覧ください。


アデニル酸シクラーゼのダウンレギュレーションにより細胞cAMP濃度が減少します。細胞cAMPが減少するとFRETが増加します。

IP-Oneアッセイ、Gαq/11 共役型受容体

ホスホリパーゼC(PLC)も、活性化されたGタンパク質の主な標的の1つであり、さまざまなプロセスに重要です。例えば、血小板のトロンビン受容体はこの経路を使って血液凝固を促進します。Cisbio のIP-One競合イムノアッセイは、イノシトール一リン酸(IP1)の蓄積を検出します。IP1は、Gαq/11 共役型受容体活性化によるPLCの刺激により誘導されるIP3の下流の安定した代謝物です。このキットでは、接着細胞と懸濁細胞の両方で、受容体アゴニストとアンタゴニストを直接的に特性評価できます。

IP-Oneアッセイに関する当社のリソースをご覧ください。


ホスホリパーゼC(PLC)からの正の刺激により細胞のIP1が増加します。アンタゴニストはPLCの刺激を阻害するため、細胞のIP1が減少します。細胞のIP1が増加するとFRETが減少します。

サイトカインアッセイ

炎症性サイトカインと抗炎症性サイトカインは、自己免疫疾患、炎症性疾患、感染症において中心的な役割を果たしています。代謝疾患と腫瘍、特に抗腫瘍免疫反応においても中心的な存在です。HTRF アッセイは、さまざまなサイトカインとケモカインを定量するための多用途プラットフォームとなり、細胞を使用した実験でのサイトカインとケモカインのモニタリングに適しています。SpectraMaxi3x マルチモードマイクロプレートリーダーとSpectraMax® MiniMax™ 300 イメージングサイトメーターを使用すれば、HTRF と細胞生存能を測定可能で、細胞の外観をモニタリングすることでアッセイの質も確認できます。

サイトカインアッセイに関する当社のリソースをご覧ください。


ドナーおよびアクセプターフルオロフォアでそれぞれ標識された抗体がTNFαに結合することで、近接した
標識によりTR-FRET を可能にします。

キナーゼ & エピジェネティックアッセイ

タンパク質キナーゼは、細胞増殖、代謝、分化、アポトーシスの制御に関与するさまざまなシグナル伝達経路で中心的な役割を果たす酵素です。キナーゼは、GPCR後の二番目に重要な薬物標的グループです。
エピジェネティクスは、例えばDNAメチル化およびヒストン修飾などの、核酸配列の変化が関与しない遺伝性の表現型変化の研究です。これらはさまざまな疾患の発症、特に癌の発症と関連付けられています。

キナーゼ&エピジェネティックアッセイに関する当社のリソースをご覧ください。


エピジェネティクスアッセイは、2 つの主要なステップで行われます。酵素ステップとその後のHTRF を用いた検出ステップです。この例では、HTRFシグナルは脱メチル化ペプチドの濃度に比例します。

最適化済みHTRF設定

最高のHTRF 結果を得るには、Cisbio が設定したHTRF の性能規格に見合ったバリデートされたマイクロプレートリーダーが必要です。リーダーの光学系、エネルギー源、検出器、ならびにHTRF 検出に使用する設定はすべて、性能に影響を与えます。
SpectraMax リーダーは、SpectraMax i3x およびParadigm マルチモードマイクロプレートリーダー用のHTRF 検出カートリッジ、およびSpectraMax iD5 リーダー用の改良されたTRF モジュールとバリデーション済みのフィルターなどの、HTRF 検出に最適化された構成品を使用しています。

当社のリソースをご覧ください。


Cisbio のHTRF 認証プログラムは、上に示したロゴの付いたリーダーが最適なHTRF 性能に必要な規格を満たしていることを保証します。モレキュラーデバイスのHTRF 適合マイクロプレートリーダーは、Cisbio により完全にバリデートされ、最適化された設定を有しています。

簡便なHTRF解析

SoftMax Pro ソフトウェアには、あらゆるHTRF適合機器を用いた検出と解析を簡略化するために、複数のプリセットされたHTRFプロトコルが含まれているため、簡単に結果が得られます。HTRFアッセイの解析では、検出された2 つの発光波長に基づく、Cisbioの特許取得済みレシオメトリック減少法 を使用します。
616nmのドナー発光を内部標準として、665nmのアクセプター発光をアッセイを行う生物学的反応の指標として使用します。このレシオメトリック測定により、ウェル間の変動を低減し、化合物の干渉を排除できます。当社のHTRFプロトコルには計算が組み込まれているため、すぐに結果を見ることができます。