自然科学研究機構 生命創成探究センター 教授
青木 一洋 教授

自然科学研究機構  基礎生物学研究所 定量生物学研究部門 生命創成探究センター 定量生物学研究グループ 教授
青木 一洋 教授 × Image Xpress Micro

ご担当されている研究分野、研究内容についてお聞かせ頂けますでしょうか

私達は、「細胞内シグナル伝達系」と呼ばれる細胞の情報処理システムに興味を持って研究を進めています。細胞は、細胞外から増殖因子や炎症性の刺激などを細胞膜上の受容体で感知し、その情報を細胞内のシグナル伝達分子へと伝えます。その結果、細胞外の変化に適応するように表現型を出力することで、細胞や組織、個体としての恒常性を維持します。細胞内シグナル伝達系は、細胞内で起こる複雑な化学反応のネットワークだということが分かっています。
また、こういった細胞内シグナル伝達系を構成する分子の遺伝子に変異が入ることで、悪性腫瘍といった病態が引き起こされることも分かってまいりました。
私たちは、複雑な細胞内シグナル伝達ネットワークを定量的に明らかにするために、蛍光イメージングの手法をもちいてアプローチしています。

MetaMorphをご購入頂いた背景、ご研究での活用についてお聞かせください

MetaMorphを使うことでCCDカメラや光源といった様々なハードウェアを顕微鏡と一緒に制御する事ができるという事と、画像取得の自由度の高さ、解析手法が非常に豊富であるという使いやすさの点を考慮してMetaMorphを使っています。

ご研究されている中での課題は何かありますでしょうか

やはり画像データの取得とその後の画像解析が大きな課題です。画像データの取得に関しては、私達は細胞が生きた状態で数日にわたってタイムラプス観察することが多いのですが、S/N比をできるだけ高くするように画像を取得したいと考えています。ですが、そうすると光毒性により細胞にダメージを与えてしまい、生理的な条件で観察できなくなってしまいます。従いまして、画像のS/N比と細胞の健康状態のトレードオフになることが多く、その適切な条件を見つけるために苦労しています。
また、もう一つの画像解析に関してですが、タイムラプスイメージングを数日にわたって行いますと、1回に得られる画像は数十GBから数百GBにおよびます。このような規模の画像データになってきますと、一つ一つ手作業で解析することは不可能でして、画像解析を効率的に行うためにプログラムを用いた自動化が必要です。
ただ、画像取得の際に申しましたように、生命科学系の蛍光画像というのは、一般的な監視カメラとかの画像とことなり、極端にS/N比が低いことが多く、画像解析のプログラム自体も困難であることが多いです。

顕微鏡システムからハイコンテンツシステムであるIXMをImage Xpress Micro (IXM)に移行した背景、また導入メリットなどあればお聞かせください

通常の顕微鏡システムですと、4-8条件くらいまでは同時に取得できるのですが、やはりより多くの実験条件で、蛍光タイムラプス観察を行う上で、ハイコンテンツシステムであるIXMは大きなアドバンテージがあります。

顕微鏡ではなく、IXMを使用されるのはどのような時でしょうか

IXMを用いることで、wellプレートで多くの実験条件を解析することが可能になります。
IXMを用いると、96 wellプレートを用いて、蛍光タイムラプス観察を安定して行うことができますので、非常に助かっております。

MetaMorphでご自身で解析プロトコルを御作りされていますが、どのような解析プログラムなのかお聞かせ頂けますでしょうか

できるだけ自動化できるところはMetaMorphで自動で解析できるようにします。例えば、蛍光共鳴エネルギー移動FRETの原理に基づくバイオセンサーを用いた蛍光タイムラプス画像の画像解析ですと、蛍光のバックグラウンドをすべての画像で引き、ずれを補正して、FRETの効率を表すRatio画像を作製し、最終的にそのRatio値を数値データとして出力する、というところまでプログラム化します。
ただ、ステップによってはところどころ微調整が必要になったり、うまくいっているかどうか目で確認する必要がありますので、そういったところは手作業にならざるを得ません。

ご研究分野の未来像についてお聞かせください

将来的には、蛍光イメージングにより細胞内シグナル伝達系のダイナミックな情報処理システムを定量的に理解することで、悪性腫瘍といった病態をコンピューター上で再現し、どういった治療戦略がもっとも合理的かを予測し、役立てたいと考えています。

PROFILE

自然科学研究機構  基礎生物学研究所 定量生物学研究部門 生命創成探究センター 定量生物学研究グループ 教授

青木 一洋 先生

ご略歴

2002年4月 名古屋大学理学部物理学科 卒業
2004年3月 大阪大学大学院医学系研究科 修士課程 修了
2007年3月 大阪大学大学院医学系研究科 博士課程 修了(博士(医学))
2008年4月 京都大学大学院生命科学研究科 特定研究員
2008年8月 京都大学大学院生命科学研究科 助教
2010年6月 京都大学大学院生命科学研究科 講師
2013年5月 京都大学大学院医学研究科  特定准教授
2016年4月 自然科学研究機構 岡崎統合バイオサイエンスセンター 教授(2018年4月まで)、自然科学研究機構 基礎生物学研究所 教授、総合研究大学院大学 生命科学研究科 基礎生物学専攻 教授兼任
2018年4月 自然科学研究機構 生命創成探究センター 教授

主な研究論文

Image Xpress Micro (IXM)

Image Xpress Micro Confocal

ImageXpress Micro Confocalハイコンテントイメージングシステムは、様々な種類の対物レンズに対応し、高品質な画像取得を可能にします。マクロなサンプルから、厚みのある組織、3Dスフェロイド、細胞および細胞内の現象まで、それぞれの研究に適した解像度で提供します。画像取得に要する時間は、WideField(非共焦点)撮影でのスクリーニングとほぼ同じです。


 

ImageXpress Micro 4

ImageXpress® Micro 4ハイコンテントイメージングシステムは、4世代にわたるイメージングの専門知識の集大成です。最新のAgile設計により、これまで以上に研究を促進することができます。また、研究ニーズに応じて、将来、共焦点にアップグレードするオプションも提供しています。 それぞれのサンプルのニーズに適するように構成したImageXpress Micro 4システムにより、生物全体、細胞、細胞間のイベントの画像を取得します。ユーザーが交換可能なフィルターキューブ、幅広い対物レンズ、温度、CO2、湿度といった環境コントロール、透過光、共焦点イメージングのオプションにより、ニーズに応じた柔軟に構成が選択できます。 30年以上のバイオイメージングの経験により、ImageXpress Micro 4ハイコンテントイメージングシステムは、より複雑化する研究をスピーディーに進めていくことが可能です。