アプリケーションノート

SpectraMax ABS Plus マイクロプレートリーダーによる SimpleStep ELISA キットを用いた インターロイキン-8濃度の定量

利点

  • Abcam 社のSimpleStep ELISA キットを用いてELISAに必要な実験時間を260分から90分に短縮
  • SpectraMax ABS Plus マイクロプレートリーダーによりELISA プレート1枚の測定をわずか5 秒で完了
  • SoftMax Pro ソフトウェアによりサンプル濃度を自動的に算出し結果をプロット

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はじめに

THP-1(ヒト単球由来細胞株)は、しばしばin vitroでのマクロファージの機能研究に用いられています。THP-1 細胞は、通常浮遊状態で培養されますが、Phorbol 12-myristate 13-acetate(PMA)で処理されると、マクロファージに分化し接着細胞になります。分化したTHP-1 細胞は、インターロイキン-8(interleukin-8、IL-8)を含むサイトカインの分泌を開始します。IL-8は多くの細胞種により分泌され、急性炎症反応を調節する役割を果たします。

酵素結合免疫吸着法(ELISA)は、一般的に96ウェルマイクロプレートを用いてIL-8をはじめとした検体の定量に用いられます。通常のELISA では実験に4時間以上必要とすることもありますが、Abcam 社のimpleStep ELISA® キットでは実験時間が約1/3 に短縮され、90分でELISAを実施可能です(図1)。このアプリケーションノートでは、ヒトのIL-8 SimpleStepELISA の実施、およびSoftMax® Pro ソフトウェアにプリセットされた便利なプロトコルを利用したSpectra Max® ABS Plus マイクロプレートリーダーによる測定についてご紹介します。

材料

  • Human IL-8 SimpleStep ELISA kit(Abcam cat. #ab214030)
  • THP-1 ヒト単球由来細胞株(ATCC #TIB-202)
  • THP-1 培養用培地
  • RPMI-1640 培地(ATCC #30-2001)
  • Benchmark™ ウシ胎児血清(Gemini #100-106)
  • 2-メルカプトエタノール(Sigma #M6250-100mL)
  • ペニシリン- ストレプトマイシン(10,000 U/mL)(ThermoFisher #15140122)
  • SpectraMax ABS Plus マイクロプレートリーダー(Molecular Devices #ABS Plus)

方法

THP-1細胞の調製

96 ウェルマイクロプレートの各ウェルに、未分化のTHP-1細胞を20,000細胞ずつ加えました。その後、培養用培地で希釈した2.5ng/μL PMA またはDMSO(陰性対照)を添加し、細胞の分化・未分化処理を行いました。細胞を37℃で48時間インキュベートした後、細胞培養上清を回収し、ELISAを実施するまで–80℃で保存しました。

ELISA

ELISA の実施日に、サンプルの培養上清を解凍し、夾雑物を除くためにマイクロ遠心分離機で2,000 × g で10分間遠心しました。続いて、キットに付属するSample Diluent を用いて1:5、1:10、1:50 に希釈しました。Human IL-8 SimpleStep ELISAkit の試薬と標準試料は、キットのプロトコルに従って調製しました。サンプルと標準試料をキットに付属するマイクロプレートに分注し、抗体カクテルを各ウェルに添加しました。プレートにシールをして、プレートシェーカーを用いて室温で1時間インキュベートしました。インキュベート後、ウェルをWash Buffer PTで3回洗浄しました。各ウェルにTMB Substrateを加え、暗所のプレートシェーカー上で15 分間インキュベートしました。各ウェルにStop Solutionを添加し、SoftMax Pro ソフトウェアにプリセットされたプロトコルを使用して、SpectraMax ABS Plus マイクロプレートリーダーにより450nmにおける吸光度(OD)を測定しました(ワークフローは図1を参照)。

図1 Abcam 社のSipleStep ELISA と従来のELISA とのワークフローの比較
Abcam 社の
SimpleStep ELISA は、効率化されたプロトコルで90 分以内に結果を出すことができます。従来のELISA とは異なり、SimpleStep ELISA は、1回のインキュベーションと洗浄ステップのみを必要とし、アッセイに必要とする時間を約1/3 に短縮できます。

結果

SoftMax Pro ソフトウェアの「HRP&TMB」プロトコルを用いたところ、直線回帰でr2=1.000のIL-8濃度の検量線を描くことができました(図2)。この検量線を用いて、DMSO で処理した陰性対照細胞およびPMA 処理した細胞に由来するサンプルのIL-8濃度が求められました。希釈が不十分なサンプルは、プロトコルにあらかじめ設定されている結果のグループ表において、「検量線範囲外、‘R’」として印がつけられています。(図3)。PMA処理した細胞のIL-8濃度は、DMSO処理陰性対照細胞(63pg/mL)よりも55倍高い3400pg/mLと算出されました(図4)。

図2 ELISA の検量線
IL-8 標準試料をSample Diluent で希釈し、Human IL-8 SimpleStep ELISA kit を用いてアッセイしました。SoftMax Pro ソフトウェアで標準試料に線形回帰を適用して得られた検量線は、優れた直線性(r2=1.000)を示しました。

図3 算出されたサンプル濃度のグループ表
SoftMax Pro ソフトウェアにプリセットされたプロトコルをもとに、PMA処理した細胞のIL-8 濃度が検量線から自動的に算出され、グループ表に表示されました。‘R’ 列に‘R’ と表示されたサンプルは、標準試料の濃度範囲外の検量線から濃度が求められたことを意味しています。今回の場合、サンプルの希釈を行う必要があることが示唆されます。

図4 未分化および分化したTHP-1 細胞におけるIL-8 濃度
。未分化(DMSO陰性対照)および分化(2.5ng/μL PMA 処理)したTHP-1 細胞でIL-8 の濃度を測定しました。未分化なTHP-1 細胞は62 pg/mL、分化したTHP-1 細胞は3400 pg/mL のIL-8 を産生していると求められ、PMA 処理により55 倍の増加が観察されました。

結論

SpectraMax ABS Plus マイクロプレートリーダーは、Abcam社のHuman IL-8 SimpleStep ELISA kit と併用することで迅速かつ高感度なIL-8 検出をもたらします。SimpleStep ELISA の特許取得済み抗体結合技術では、従来のELISA 実験に必要とする時間の約1/3に短縮し、わずか90 分でTHP-1 細胞培養上清中のIL-8の定量を可能にします。
プレートリーダーの8 チャンネル検出器は、ELISA の96 ウェル マイクロプレート1 枚をわずか5 秒で測定します。SoftMax Pro ソフトウェアにプリセットされたプロトコルは、検量線の自動作成、サンプル濃度の自動算出を行います。また、陰性対照サンプルと処理群の結果を棒グラフで表示できます。これらの機能により、発表に使用できる高品質な結果を得るための時間を大幅に短縮できます。

SimpleStep ELISA® is a registered trademark of Abcam plc.
SimpleStep ELISA® は、Abcam 社の登録商標です。

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