アプリケーションノート

ホモジニアスFura-2 カルシウムアッセイ

利点

  • クエンチベースの技術による大きなシグナルウィンドウ
  • 洗浄ステップをなくしレシオメトリック測定を行うことで アッセイのばらつきを低減
  • 洗浄ステップをなくすことで時間とアッセイ費用を節約

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はじめに

Fura-2 色素は、長年にわたり、カルシウム動員の測定(細胞イメージング、GPCR 媒介性細胞内カルシウム流動、イオンチャネル活性化など)において重要なツールとされてきました。このレシオメトリック色素は、カルシウム結合型と非結合型の蛍光強度比を算出することで、色素添加や細胞播種におけるアッセイの不一致を補正するのに役立ちます。しかし、アッセイには洗浄ステップが必要であり、ウェル間のばらつきや、アッセイに要する時間・煩雑さの増大の原因となっていました。
モレキュラーデバイスのFura-2 QBT™ カルシウムキットでは、評価済みのクエンチベースの技術とレシオメトリックFura-2 カルシウム指示薬を組み合わせることによりホモジニアスアッセイを実現し、さらに検出前の細胞洗浄ステップを除くことでスループットを高めつつ、細胞由来のばらつきを最低限に抑えます。また、Fura-2 QBT カルシウムキットは、励起波長が紫外領域にあるため、488 nm で励起される蛍光化合物の影響を軽減することができます。

アッセイ原理

Fura-2 AM は、340 nmと380 nm で励起し、510 nm で発光するカルシウム感受性指示薬です。この色素がカルシウムイオンと結合すると、380 nm から340 nm への吸収シフトがおこります。図1 は、Fura-2 に結合したカルシウムの増加により、340/510 nm(Ex/Em)で観察される蛍光シグナル(緑)が増加し、380/510 nm(Ex/Em)で観察される蛍光シグナル(オレンジ)が減少する様子を示しています。蛍光シグナル比を算出し、最大– 最小シグナル応答を求め、濃度応答曲線を作成したものがインセットグラフです。

図1 Fura-2 QBT カルシウムアッセイを用いたレシオメトリック解析。細胞内カルシウム濃度の変化に応じた未加工のシグナル変化を、オレンジと緑で示す。2 波長のシグナルの比をインセットグラフに示す。

Fura-2 QBT カルシウムキットアッセイの調製

本検討ではFura-2 QBTカルシウムキット、Explorer format(PN#R8197)を使用しました。色素は、20mM HEPES を含むハンクス平衡塩類溶液(HBSS)に再懸濁しました。細胞外への色素の漏出を防ぐため、必要に応じてプロベネシド(PBX)を添加しました。前夜に黒色および透明な384ウェル細胞プレートに播種した接着性細胞(CHOM1 またはHeLa)をインキュベータから取り出しました。25μL のアッセイバッファーまたは培地を入れたウェルに、Fura-2 QBT色素または他社製品色素を含む25μLのローディングバッファーを添加しました。Fura-2 QBT キット(PN #R8197)またはBDレシオメトリックカルシウムキット(#644243)をロードしたプレートを、37℃、5% CO2 で1 時間インキュベートしました。比較試験として、従来のFura-2 洗浄プロトコルを用いた方法も行いました。
通常のFura-2 洗浄プロトコルを用いる場合は、50μLの1X色素ローディングバッファーを添加する前に、それぞれのウェルから培地を除去し、他のキットと同じ時間と条件で細胞プレートをインキュベートしました。すべてのプレートをインキュベータから取り出し、室温になるまで10 分間放置し、FlexStation® 3 マルチモードマイクロプレートリーダーまたはFLIPR® Tetra システムで測定しました。従来のFura-2 洗浄プロトコルを用いたアッセイでは、測定前に過剰な色素を除去するため、プレートをHBSS アッセイバッファーで3 回洗浄する必要がありました。

FlexStation 3リーダーおよびFLIPR Tetra システムにおけるレシオメトリックカルシウム動員アッセイ

384 ウェルポリプロピレンプレート上で、適切なリガンドの5X濃度溶液(HBSS バッファー + 20 mM HEPES 中)を調製しました。レシオメトリックアッセイに最適化したパラメータを用いたFlexStation 3 リーダー(図2)またはFLIPR Tetra システム(図3)での測定中に、アゴニストを添加しました。340 nm および380 nm の波長で色素を励起しました。
各ウェルにおいて、510 nm の蛍光シグナルを検出し、添加中と添加後を含む約90 秒間の両励起波長の蛍光シグナルの相対蛍光単位(RFU)を測定しました。アッセイ中の各タイムポイントにおける2 励起波長(340 nm と380 nm)の蛍光シグナル比を出力値として計算しました。レシオメトリックシグナルトレースから、最大– 最小値を算出しました。グラフ作成用のデータとEC50/IC50 濃度を、ScreenWorks® またはSoftMax® Pro ソフトウェアからエクスポートし、GraphPad Prism を用いて計算しました。Zhang らが報告した方法により、Z ファクターを算出しました。

結果

カルバコール Fura-2 QBT BD キット Fura-2 洗浄あり
EC50(nM) 13 17 19
Z@EC80 0.7 0.5 0.38
ウィンドウ 1.1 0.85 0.7
アトロピン Fura-2 QBT BD キット Fura-2 洗浄あり
EC50(nM) 2.4 2.2 3.3
Z@IC80 0.81 0.53 0.66
ウィンドウ 1.2 0.75 0.72

図2 Fura-2 QBT カルシウムキットにより最大のシグナルウィンドウが得られる。このキットにより、FlexStation 3 リーダーでの最大のシグナルウィンドウと、EC80 またはIC80 での最も安定したZファクターが得られる。

ヒスタミン Fura-2 QBT BD キット Fura-2 洗浄あり
EC50(nM) 200 900 300
Z@EC80 0.72 0.54 0.69
ウィンドウ 0.77 0.29 0.44
ピリラミン Fura-2 QBT BD キット Fura-2 洗浄あり
EC50(nM) 4.7 2.7 1.3
Z@IC80 0.8 0.49 0.33
ウィンドウ 1.1 0.52 0.37

図3  Fura-2 QBT カルシウムキットはアッセイのばらつきの低減に役立つ。このキットは、大きなシグナルウィンドウとEC80 またはIC80 での安定したZファクターを提供し、洗浄ステップをなくしてアッセイのばらつきを低減することで、アッセイをさらに改善する。測定にはUV LED を搭載したFLIPR Tetraシステムを用いた。

試薬 説明 商品番号
Fura-2 QBT カルシウム
評価用キット
コンポーネントA* 2 バイアル
希釈バッファー(コンポーネントB) 1 ボトル
* 各試薬バイアル(コンポーネントA)はプレート(96、384、1536 ウェル)1枚分のアッセイに十分量の試薬を含む。
各キットはプレート2 枚分のアッセイに十分量の試薬を含む。
R6139
Fura-2 QBT カルシウム
エクスプローラー キット
コンポーネントA* 10 バイアル
希釈バッファー(コンポーネントB) 1 ボトル
* 各試薬バイアル(コンポーネントA)はプレート(96、384、1536 ウェル)1枚分のアッセイに十分量の試薬を含む。
各キットはプレート10 枚分のアッセイに十分量の試薬を含む。
R8197
Fura-2 QBT カルシウム
バルクキット
コンポーネントA* 10 バイアル
* 各試薬バイアル(コンポーネントA)はプレート(96、384、1536 ウェル)10枚分のアッセイに十分量の試薬を含む。
各キットはプレート100 枚分のアッセイに十分量の試薬を含む。
R8198

以下のモレキュラーデバイスのシステムに適合

結論

Fura-2 QBT カルシウムキットは、従来のFura-2 アッセイに代わるホモジニアスアッセイであり、モレキュラーデバイスが特許を所有するクエンチベースの技術により洗浄ステップも不要です。これにより、スループットが改善され、不均一な細胞播種や洗浄での細胞のロスによるアッセイのばらつきが低減され、アッセイのコスト(バッファーコストやばらつきによるアッセイ再施行に必要なコスト)が削減されます。BDレシオメトリックカルシウムキットおよび従来のFura-2 洗浄アッセイと比較して、Fura-2 QBTカルシウムキットのシグナルウィンドウは最も大きく、EC80 およびIC80 でのZ ファクターも最も高いものとなっています。Fura-2色素はUV 領域で励起されるため、488 nm で励起される自家蛍光化合物による干渉が回避できます。Fura-2 QBT カルシウムキットは、FlexStation 3 リーダーおよびFLIPR Tetra システムで検証済みであり、ベンチトップアッセイから完全なハイスループットスクリーニングまで、拡張可能なソリューションを提供します。

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