非染色の透過光画像を用いた細胞数の計測および 細胞毒性の評価

利点

  • 透過光イメージングを用いた対象のセグメント化およびカウント
  • 透過光で細胞増殖をモニタリング
  • 染色せずに細胞毒性を評価
  • 抗増殖性・細胞毒性化合物の効果を評価

はじめに

多くの生物学のアプリケーションでは、蛍光マーカーやその他の標識をせずに、時間経過に沿った複数の時点での細胞数や細胞の健康状態、培養密度および細胞増殖をモニタリングすることが求められます。特に、透過光(TL)イメージングを用いて細胞をモニタリングする際は、多様な細胞応答を評価するために信頼性が高く効率的な細胞計数方法が必要とされています。

材料

  • CHO細胞(ATCC、CRL-1985)
  • HeLa細胞(ATCC、CCL-2)
  • HeLa培地(10% FBS/MEM、1% ペニシリン/ ストレプトマイシン、Thermo Fisher Scientific)
  • CHO 培地(10% FBS/Ham’s F12、1 %ペニシリン/ストレプトマイシン、ThermoFisher Scientific)
  • Hoechst(ThermoFisher Scientific)
  • 96ウェルマイクロプレート(Greiner Bio-One International)
  • ImageXpress® Nano自動イメージングシステム(CellReporterXpress 自動画像取得・解析ソフトウェア搭載)(Molecular Devices)

透過光を用いた細胞のセグメント化およびカウント

CellReporterXpressソフトウェアでは、透過光画像を用いて対象のセグメント化およびカウントが可能です。本研究では、ラベルフリーな細胞の計数精度を求めることで、透過光画像を用いた細胞解析による細胞増殖や細胞毒性の評価の可能性について検討しました。
段階希釈した細胞を透過光でカウントした細胞数の精度を見積もり、細胞核の対比染色を行ってカウントした細胞数と比較しました。
CHO細胞およびHeLa細胞を、それぞれ適切な培地を使用して96ウェルプレートに播種しました。最上列に20,000 cells/well の細胞密度で播種し、そこから2倍の段階希釈を行いました。播種してから24時間後に細胞をHoechstにより染色して、4%パラホルムアルデヒドで固定し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗いました。個々のウェルの画像をImageXpressNanoシステムを用いて、10 倍または4倍の対物レンズで取得しました。384ウェルプレートにおいては、ウェル当たり1 枚の10倍画像を取得しました。

図1. CHO細胞およびHeLa細胞の透過光画像ならびにソフトウェアによる解析マスク
CHO細胞およびHeLa細胞の画像は、ImageXpress Nanoシステムを用いて10倍のPlan Fluor 対物レンズおよび透過光チャンネルを用いて取得した。取得された画像は、CellReporterXpressソフトウェアの「TL Cell Count, General」プロトコルを用いて解析した。

図2. 透過光画像解析または核染色による細胞計数の比較
HeLa細胞およびCHO細胞を、24時間培養し、その後固定してHoechst(16 M)により染色した。画像は、ImageXpress Nanoシステムを使用して、透過光とDAPIの2波長で、10倍のPlan Fluor対物レンズを用いて取得した。細胞数を計数するために、透過光画像は「TL Cell Count, General」解析プロトコルを用いて、蛍光画像は「Standard Cell Count」解析プロトコルを用いて、それぞれ処理した。

蛍光標識せずに細胞毒性を評価

HeLa細胞を384ウェルプレートに播種し、抗ガン性化合物であるMitomycin C、Etoposide、Paclitaxel、Doxorubicinを、6桁に及ぶ範囲で濃度を振って加え、72時間処理しました(図3)。生細胞を透過光で画像取得し、「TL Cell Count, General」解析プロトコルを用いて解析しました。細胞増殖および細胞死への影響を、細胞数を測定することにより評価しました。化合物で処理された細胞の数は大幅に減少しました。EC50値を導出するために、Hill Modelにより濃度反応曲線を求めました。
抗ガン性化合物により処理した細胞は、化合物濃度の上昇に対応して、細胞数が明らかに減少しました(図3)。

図3. 4種類の細胞毒性化合物の濃度反応曲線
HeLa細胞を384ウェルプレートに播種し、細胞毒性化合物により72時間処理した。画像は、ImageXpress Nanoシステムを使用して、透過光とDAPIの2波長で、10倍のPlan Fluor対物レンズを用いて取得した。細胞数を計数するために、透過光画像は「TL Cell Count, General」解析プロトコルを用いて処理した。すべての化合物について、細胞数は化合物濃度の増加に伴って濃度依存的に減少した。4パラメーターカーブフィッティングによる濃度反応曲線を示す。計算されたEC50値は、次のとおり:Paclitaxel 8.0 ± 2.0 nM、Doxorubicin 30 ± 4 nM、Mitomycin C 50 ± 5 nM、およびEtoposide 121 ± 37 nM。

結論

この方法により、透過光画像解析は様々な化合物の抗増殖性および細胞毒性の評価だけでなく、細胞数の正確な測定にも使用できることが示されました。