自動イメージングを用いたオートファジーの検出

利点

  • オートファジーに対する化合物の影響を検出
  • オートファジーを標的にした新たな治療薬を同定
  • 自動イメージングを使用して効率的なオートファジーアッセイを実施

はじめに

オートファジーは、細胞ストレスを受けて損傷したタンパク質やオルガネラを分解・再生する高度に管理されたプロセスです1, 2。分解のための印をつけられた細胞構成成分が二重膜によって隔てられ、オートファゴソームと呼ばれるユニークな小胞が形成されます1。オートファゴソーム小胞は、リソソームと融合し、リソソーム加水分解酵素による分解のためにその内容物を輸送します。

オートファジーには、栄養飢餓への適応、損傷した細胞内タンパク質やオルガネラの除去、細胞の発達、アンチエイジング、微生物の除去、細胞死、ガンの抑制、抗原提示など、多様で複雑な生理学的・病態生理学的役割があります2。マイトファジーは、オートファジーによるミトコンドリアの選択的分解です3。このプロセスでは、しばしば細胞の損傷やストレスを受けて変性したミトコンドリアが除去されます。最近では、オートファジーはパーキンソン病などの神経変性疾患と関連付けられています。パーキンソン病の発症機序の一部は、オートファジーの調節異常および変性ミトコンドリアの正常な再生サイクルの崩壊の結果として、神経細胞の細胞死を伴います。PINK1 やParkin の機能喪失など、本疾病に関係しているいくつかの遺伝子の変異により、損傷したミトコンドリアおよびタンパク質凝集物の蓄積が引き起こされ、細胞の変性が促進されます。

オートファジーの調節異常は、様々な神経変性疾患およびガンに関与していることが実証されてきているため、このプロセスの様々なステージを標的にした新規治療薬の発見は、薬物療法のための有望で新しいアプローチとして姿を現しています。

材料

  • Cyto-ID® Autophagy Detection Kit(Enzo Life Sciences)
  • MitoTracker Orange dye(ThermoFisher Scientific)
  • LysoTracker Red dye(ThermoFisher Scientific)
  • Hoechst(ThermoFisher Scientific)
  • ImageXpress® Nano 自動イメージングシステム(CellReporterXpress ソフトウェア搭載)(Molecular Devices)

オートファジーに対する化合物の影響の検出

オートファジーに対する化合物の影響を調べるスクリーニングアッセイのために、ImageXpress® Nanoシステムの効率を評価しました。アッセイ開発のためのモデルとして、PC12ヒト神経芽細胞腫株を使用しました。細胞は、6,000 cells/wellで384ウェルプレートに播種し、48時間培養しました。オートファジーに対する影響を評価するために、細胞を様々な化合物で24~48時間処理しました。次に、オートファゴソームを追跡するためにCyto-ID®Autophagy Detection Kit、ミトコンドリア検出にMitoTracker Orange dye、リソソームの標識にLysoTracker Red dye、細胞核の識別にHoechstを用いて細胞を染色しました(それぞれ0.2 μM、0.2 μMおよび1 μM)。画像は、20倍または40倍の対物レンズと4 種類の検出チャネル(それぞれFITC、TRITC、Cy5およびDAPI)を搭載したImageXpress Nanoシステムを使用して取得しました。1ウェル当たり1画像を20倍の倍率で取得し、さらに統計的に良好な結果を確保するために、1ウェル当たり2~4画像を40倍の倍率で取得しました。
画像は、CellReporterXpress™自動画像取得・解析ソフトウェアのGranularityアプリケーションモジュールを使用して解析しました。核マーカーを使用して細胞をセグメント化する一方、粒度アルゴリズムにより細胞質中のオートファゴソーム、リソソーム、ミトコンドリアといった小さな対象物を検出し、特性を解析しました。解析結果として「顆粒」(細胞内オブジェクト)の総数および総面積を求めました。代表的な画像およびクロロキン(30 μM)処理した細胞の解析結果を図1に示します。
オートファジーの既知の誘導剤であるクロロキン、ベラパミルおよびアミオダロンに対する濃度応答を調べ、EC50値を評価しました。オートファゴソームの総数で比べたところ、クロロキン、ベラパミルおよびアミオダロン処理により、オートファジーのレベルはそれぞれ6.2、4.3および3.4倍に増加しました(EC50値は、それぞれ3.05、3.1および14.7 μMでした)。

図1 オートファジー検出アッセイ
クロロキンで24時間処理し、Cyto-ID Autophagy Detection Kitにより染色したPC12神経芽細胞腫細胞の画像。画像は、ImageXpress Nanoシステムにより20倍の倍率で撮影。オートファジー粒子(緑色)、細胞核(青色)。

図2 オートファジー画像解析
左: クロロキンで24時間処理し、Cyto-ID試薬、MitoTracker OrangeおよびHoechstにより染色したPC12神経芽細胞腫細胞の画像。画像は、ImageXpress Nanoシステムにより40倍の倍率で撮影。オートファジー粒子(緑色)、ミトコンドリア(赤色)、核(青色)。


右: CellReporterXpressソフトウェアのGranularityアプリケーションモジュール使用後に、オートファジー粒子および核について示した解析マスク。核(緑色)、オートファゴソーム(白色)。

図3 オートファジーに対する化合物の影響
オートファジーに対する濃度依存的な応答を、解析結果として得られる顆粒の総数(オートファゴソームの総数:Total autophagosome counts)を指標として比較した。クロロキン(赤色)、ベラパミル(緑色)、アミオダロン(青色)。

結論

このアッセイにより、オートファジーの誘導剤または阻害剤のハイコンテントスクリーニングに対してImageXpress NanoシステムおよびCellReporterXpressソフトウェアの信頼性が示されました。これにより、薬品開発初期にオートファジーを標的にした新たな治療薬の同定が可能になります。

参考文献

  1. 1.Mizushima, N; Komatsu, M (2011). Autophagy:renovation of cells and tissues. Cell. 147:728–41
  2. 2.Mizushima, N; (2007) Autophagy: process and function, Genes & Dev. 21: 2861-2873
  3. 3.Lemasters, J (2005). Selective mitochondrial autophagy, or mitophagy, as a targeted defense against oxidative stress, mitochondrial dysfunction, and aging. Rejuvenation Research. 8: 3–5